債務整理のモチベーションに与えてくれる効果

債務整理のモチベーションに与えてくれる効果

医療制度が整っていることと医療環境が充分に機能していることとは必ずしも一致しないが、健康面だけを考えると日本はあらゆる指標が世界各田の上位にある。
現在、日本ではどの地域にあっても医療を受けることができる。
どのような地域にも医師は必ずいるし、病気になったからといってあわてて医師や病院をさがす必要はない。
医療機関と国民との壁はなくなっている。
加えて、日本は健康保険制度が完備している。
初診料をとられるにしても、たいていのくすりや注射は全額患者が負担することはない。
日本に五年間滞在していたアメリカ人ジャーナリストが、「日本でもつとも驚いたのは、医療環境にめぐまれていることだった。
しかもおどろくほど患者の自己負担が少ない」と感に耐えぬといった表情で、私に洩らしたことがある。
健康保険制度の充実は、日本の福祉を測る最大の特徴である。
医療機関は患者の懐など気にせずに国や地方自治体、それに診療報酬支払基金からの支払いを受けられる。
この健保制度は、資本主義社会の中に存在する社会主義的システムである。
そうであるがゆえに、また基本的な問題を抱えている。
まずこの制度は「医師性善説」にもとづいている。
医師が決してもうけ主体の医療を行なうわけではないとの前提で、このシステムは機能している。
だが、現実にはこのタテマエどおりにいっていない。
たとえば、患者が疾病のために病院に行き、診断を受ける。
医師はその患者を診察し、そこで要した診療報酬の明細(レセプト)を支払基金や国民健康保険の支払い団体に請求する。
支払基金や国保の支払い側はそのレセプトを一応は審査をするが、その審査は大体が各地域の医師会の代表などによって行なわれるので素通りの状態である。
こういう審査の仕組みが問題点としてあげられる。
次いで、この診療報酬のシステムは、出来高払いになっていることだ。
一人の患者にいくつもの検査を行ない、くすりを大量にわたしたら、その分だけ収入が多くなる。
しかもそういう患者を、一回の治療で済む症状であったとしても、何回も通院させる。
そうすると、その分医療機関の収入はふえていくのである。
これはよく引用されるケースだが、まだ国家試験を通ったばかりの研修医が盲腸患者の手術をしたとする。
技術が拙いために、盲腸の手術に時間がかかり、術後の手当てもわるく他の疾病も併発したとしよう。
そういう医療背はすべて収入に結びつく。
逆に医墳技術の高い医師が手早く、そして特に余病も併発させずに手術を終えた。
この医師の収入は、先の医療技術の拙い医師よりはるかに少ない。
誤診や下手な手術のほうが経済的には潤うというシステムだ。
良心的な医師が、咳をするだけで風邪としか思えない患者に対して、問診を行なって、「ああ、風邪ですよ。
二、三日ゆっくり休養をとって寝ていれば治りますよ」とくすりも与えずに帰したとしよう。
こういう医師は風邪ていどでくすりを服用するとむしろ副作用を生むこともあると、あまりくすりを与えないのがふつうだ。
この良心的な医師は、初診料ていどの収入しかあげられない。
ところがもうけ主体の医師なら、咳ひとつだけの患者にも、いやもしかするとがんかもしれないといって、あらゆる検査をすることが可能だ。
さらには、このくすりとこのくすりを飲みなさい、また三日後においで下さい、と診察する。
この医師と先の良心的な医師との間にはたちまち十倍以上もの収入の開きがでてしまうだろう。
さらに新しい医療機器を導入した医師は、その機器を使わないことには減価償却ができない。
そこで患者がくるたびに機器類を使うことになる。
それが多ければ多いほど、償却の回転が早くなる。
現行の健康保険制度がどれだけ医師の意思によって、錬金術化していったかは昭和五十年代の老人医療のケースを見ればよくわかる。
悪質な病院や医師は、老人患者をくすりづけ、検査づけにした。
はなはだしいときは、三カ月で効率よくもうけるための検査リストやくすりのリストをつくり、症状などに関係なく一律にそれを適用してもうけの限りをつくした。
私の知っているケースでは、医局に、今月は医師個人がどれだけの保険点数をあげているかをグラフにして、医師たちに「もっと稼げ、もっと稼げ」と尻を叩いていたケースもある。
極端に売り上げ″をあげる医師は、バックマージンをもらっていたという話もある。
国民医療費はこうしたシステム上の矛盾を反映して、毎年六パーセントから七パーセントの伸びを示してきた。
まるで日本の経済成長は医療費を捻出するためのようにさえなったのだ。
そのため昭和丘十八年には老人保健法が制定され、老人医療に要する医療膏に歯止めをかけることが企図された。
さらに厚生省は、乱診乱療をチェックするために、レセプトの審査を厳密にするといい、省内に監視団をつくっては疑問のあるレセプトを徹底して調査する方針をとっている。
だが出来高払いの、ンステムにメスをいれていないために、依然としてこれまで指摘してきたような実態は消えていない。
医師の職能を規定する法律には、医師法や医療法などがある。
これらはすべて医師が倫理性の高い、公共性のある、そして国民の健康に貢献する社会的役割をもつという前提で出発している。
「医師性善説」という意味はこの点にある。
だが、これまで紹介してきたように、すべての医師が倫理性が高く、遺徳や公共心に富んでいると見るのは明らかに誤りである。
医師の中には、患者の疾病よりも自らの経済的利益を追い求めるのに汲々といった者も少なくないのだ。
こうした医師は、個人的な資質にも確かに問題がある。
経済的に潤うことが人生目的であり、そして自由気ままな生活に溺れていたいという医師も決して多くはないが、実際に存在している。
彼らは大多数を占める真撃な医師の蔭に隠れて「医師性善説」というこの社会の規範を巧みに利用している。
このようなタイプの医師は放逐しなければならないというのが私の考えなのだが、しかし彼らのほうが表面上は患者に必要以上に笑顔で接していて、無知な患者の中には「やさしく接してくれる」という評判が立っていたりする。
私は、末期患者から「私は尊厳死を希望します」とリビング・ウィルを見せられたとしても、このような医師のほうが口あたりのいいことをいうのではないか、と想像している。
真撃な医師であるなら、このような意思を示されたら、必ず、丁寧に自らの考えを説明して患者とコミュニケーションをはかるはずである。
その接点をさがしだそうと努力をつづけるはずだ。
だがこのような医師をどれだけもてるかが、今後の課題である。
極端に金もうけに走る医師は論外としても、民間病院、診療所、公立系の病院でもあるていどは収益を考えなければならないのが現実の姿でもある。
というのは、医療機関や開業医は経営基盤を安定させなければ、質の高い医療を行なうことはできないからだ。
病院経営者が人件費の高騰に頭を痛め、患者の診察をしながら、その一方で看護婦や職員の給料をどのようにして支払うのかと考えていては、患者とて不安でたまらない。
現在、病院経営をとりまく環境は決して明るくない。
高騰する人件費、地代、それにレセプト審査の厳格さ、次々に進む医療技術も身につけなければならないし、医療機器の導入も進めなければならない。


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